ごく普通のしだれ桜(枝垂れ桜)を撮ってみました。巷にあるような行楽名所の「豪華なしだれ桜」ではありません。ピークも過ぎてしまっているで、残念ながら可憐さも少し落ちてしまっています。今回は、撮影時の「写真のお話」と「しだれ桜(枝垂れ桜)」の魅力について少しだけ。
今回の撮影に使用した機材【富士フイルム】 。
カメラ:富士フイルム【FUJIFILM】X-T20
レンズ:富士フイルム【FUJIFILM】XF35mmF1.4 R,XF14mmF2.8 R
場所:兵庫県宍粟市千種町
いろんなシーンでの「しだれ桜(枝垂れ桜)」
うっすらと光差す薄曇りの日
「曇りの日に撮った花」は、これまでまともに撮れたためしがなかったので心配でしたが、薄曇りで、若干、日が差していたので可もなく不可もなく。逆に照りすぎてなくてよかったのかもしれません。「しだれ桜」らしい雰囲気だけは撮れたでしょうか。
「曇りの日の桜」の撮影はほんとに難しい・・・
カンカン照りの桜も色が飛んでしまって撮影するのが難しいですが、いまにも降りそうな曇りの日に撮るのはさらに難しいですね。
せっかく来たのだからと無理やり撮りましたが・・・
きっぱりと諦めるか、最初から来ないほうがましでした。
「しっとりとした艶っぽさ」を出そうと思ったのですが・・・
「地味さ」と「うっとうしさ」だけが目立ってしまいました。
なんとか絵にならないかと頑張りましたが・・・
「曇り」というお天気感が出ないようにできるだけ花で埋めたのですが、花そのものに「お日さんの光」がないのでやはり地味さはカバーできませんでした。「メリハリ」がでません。
平安時代「薄暮の山桜」はこんな雰囲気?
桜の和歌は平安時代にはすでにいろんな人に読まれていました。「電気」というものがない当時の「薄暮に浮かぶ山桜」とはこんな感じだったのでしょうか?
「山桜 霞の間より ほのかにも 見てし人こそ 恋しかりけれ」
– 紀貫之 「古今和歌集」 –
端的に言いますと、たまたま垣間見た女性の美しさに感動したという句。花摘みを「山桜」にたとえ、その「手の届かないほどの美しさ」を歌った句。あるいは実際に、その女性が自分には分不相応なほど気高く高貴な女性であったのかもしれません。
「清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよひ逢う人 みなうつくしき」
– 与謝野晶子 「みだれ髪」 -
女性が過度な自己主張や愛情表現をすることがまだ許されていなかった時代に、情熱的で官能的な作品を表現し続けたことで有名であった与謝野晶子。のちに夫となる与謝野鉄幹と不倫の中にあった彼女が、その恋愛中の鉄管への恋慕の想いを夜桜の中行きかう人々に投影した句。
花の色は うつりにけりないたづらに 我が身世にふる ながめせしまに
– 小野小町 「古今和歌集」 –
前回掲載した「山桜」のページに載せています。
江戸時代 「吉原遊郭通りの桜」をイメージして
江戸時代「吉原遊郭通りの夜桜」は、当時、日本有数の桜の名所でした。
派手な花魁道中、雪洞に照らされた「艶っぽい薄ピンクの桜」をイメージして撮ってみましたが、いかんせん今にも降りそうなドン曇りの天気でしたので派手さとは程遠い、「単なるうっとうしいだけの写真」になってしまいました。ちなみに、江戸時代の「吉原遊郭通りの夜桜」は主に「ソメイヨシノ」でしたが。
江戸時代吉原の桜並木はこの上なく「幻想的な空間」だった
月明かりと遊郭通りの明かり、そして雪洞に照らされた何本もの桜並木。きれいな緑の竹垣、派手な花魁道中。江戸時代の吉原はまさにこれ以上ない「幻想的な空間」そのものでした。ちなみにこの桜並木は、あえてこの時期に、持ってきて植えられ、シーズンが終わるとわざわざ取っ払ったともいわれています。年齢、性別を問わず、江戸時代の吉原の桜並木は日本有数の桜の名所でした。
「しだれ桜(枝垂れ桜)」の特徴と魅力
「しだれ桜」の特徴 「なぜ枝が垂れるの?」
しだれ桜(枝垂れ桜)はその名の通り「しだれ」つまり「枝垂れ」=「枝が垂れる」ところからきているのですが、なぜ他の桜と違って「枝が垂れるのでしょうか?」
それは、
突然変異により「植物ホルモン」が不足し、枝の上側の組織が硬くならないことが原因とされています。そのため、重みに耐えきれず枝が垂れ下がるとされています。逆に、この「突然変異」によることから、しだれ桜の子孫が必ずしも枝が垂れるとは限らないということも起こりえます。
「しだれ桜」の魅力
・「艶」という言葉がよく似合う
「ソメイヨシノ」が「可憐な優等生」ならば、「しだれ桜」は「艶」という言葉につきます。
始めて見た「しだれ桜」は本当に魅力的でした。
「桜並木」といえば主に「ソメイヨシノ」です。対して「しだれ桜」はどちらかというと単体で、1本単独で咲いている場合が多いです。ですが満開に咲き枝垂れた「しだれ桜」は本当にきれいです。「きれい」というより「魅力的」というほうがいいかもしれません。若いシダレザクラはとても「かわいく」、何百年の樹齢を経たしだれ桜はまさに「豪華」そのものです。日本の天然記念物に指定されているしだれ桜の中には樹齢1000年を超えるものもあります。「豪華絢爛」そして、何とも言えない「艶っぽさ」があります。
・「艶やかなみだれ髪」 ピークを過ぎてもなお「魅力的」
こちらの「しだれ桜」は少しピークを過ぎていましたので本来の可憐さはありませんでした。かなりの部分花が散り、葉桜になっていました。それでも「ソメイヨシノ」とは違い、ピークを過ぎてもなお「魅力的」です。「かわいさ」と「艶っぽさ」が衰えず、いまだ不思議な魅力があります。これが「しだれ桜(枝垂れ桜)」の特徴であり魅力だと思います。先ほどの与謝野晶子の「みだれ髪」とはまた別の意味で、見た目的に「艶やかなみだれ髪」そんな言葉がふと浮かびます。
・「しだれ桜」の魅力を映画「ローマの休日」に例えると
「ソメイヨシノ」は気高い宮殿の王妃をしている時の上品なオードリーヘップバーン。対して若い「しだれ桜」は、宮廷を飛び出し、王妃であることを隠して街中を無邪気に楽しむオードリーヘップバーン。俗世間で普通の女の子に見せかけて過ごしながらも、どこかしら見え隠れする「気品と可憐」さが魅力的です。
・「しだれ桜」の魅力を江戸時代「花魁(おいらん)」に例えると
「ソメイヨシノ」は、気高い皇室のファーストレディー。対して、満開の「しだれ桜」は、江戸時代有数の桜の名所である吉原の「頂点に立つ花魁」。
ピークを過ぎた「しだれ桜」は、現役を退き、人知れずひっそりと静かな場所で余生を過ごす「かつて頂点を極めた花魁」。現役を退き地味な生活を送りながらも、どこかしらその姿に「気品と可憐さと艶っぽさ」が見え隠れする魅力的な女性。
といったところでしょうか。
しだれ桜(枝垂れ桜)の「花」を写真撮影
富士フイルムのカメラとレンズで撮影
やはり桜の撮影は天気の日に限ります。
カメラ:富士フイルム【FUJIFILM】X-T20
レンズ:富士フイルム【FUJIFILM】XF35mmF1.4 R
しだれ桜(枝垂れ桜)の名所 少しだけ
参考までに全国の撮影スポットを少しだけ掲載しました。検索すればいろんな「しだれ桜」が出てきます。
◆ 全国の「枝垂れ桜」の名所
・ 京都府平安神宮神苑枝垂桜(京都府京都市左京区)
谷崎潤一郎の「細雪」、川端康成「古都」にも絶景美と出てくるほどの美しさ
・ 円山公園 祇園枝垂桜(京都府東山科区)
樹高10m その他800本の桜
・ 日蓮宗本山本満寺枝垂桜(京都府京都市上京区)
「祇園枝垂桜」の姉妹桜
・ 妙満寺枝垂桜(京都府京都市左京区)
大書院枝垂桜と桜園
・ 三春滝桜(福島県田村郡):天然記念物
樹齢1000年以上
・ 角館武家屋敷通り枝垂桜(秋田県仙北市)
天然記念物
・ 日中線しだれ桜並木(福島県喜多方市)
3キロにわたる約1000本の並木道
・ 六義園枝垂れ桜(東京都文京区)
流れ落ちる滝のような幻想的な枝垂桜
・ 関場しだれ桜並木(栃木県佐野市)
天然記念物 樹齢350年
奈良県吉野郡「高見の郷」 山一面の枝垂れ桜は圧巻です!
標高650mの山中に「枝垂桜」ばかり1000本。色とりどり豪華で幻想的。まさに「天空の園」。枝垂桜ばかりで1000本というのは他には例を見ないのではないでしょうか?!
「兵庫県内の枝垂れ桜」
・ 泰雲寺枝垂桜(兵庫県美方郡新温泉町)
樹齢250年以上、幹回り日本一、兵庫県天然記念物
・ 善福寺のしだれ桜( 兵庫県神戸市北区有馬町)
樹齢250年以上、有馬温泉桜の名所
・ 高蔵寺枝垂桜(兵庫県丹波篠山市)
丹南桜百選、もみじ三山・花の寺として有名、四季を通してきれいな景観
・ 光福寺の枝垂桜(兵庫県佐用郡佐用町漆野)
樹齢300年以上、県指定天然記念物、ライトアップあり
・ 西方寺の枝垂桜(兵庫県養父市八鹿町上八木)
夜間ライトアップあり
しだれ桜(枝垂れ桜)の花言葉
最後にしだれ桜の「花言葉」を少しだけ。
しだれ桜の「花言葉」
「優美」「円熟した美女」「ごまかし」
その見た目の美しさから「優美」「円熟した美女」という花ことばがあります。一方で、「ごまかし」という花言葉もあります。こちらも見た目から来ていますが、垂れ下がった枝の姿に「隠す」「隠れる」といった意味合いがあるところからきています。
ということで今回は「しだれ桜」の写真と魅力について書かせていただきました。
今回は以上です。
ありがとうございました。
兵庫県宍粟市千種町千草33
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